ウソツキ忍者の独断と偏見に基づく感想・考察

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人類は核を正しく扱えるのか?―――『核兵器のしくみ』を読んで

タイトルの通り核兵器がどのようなしくみで出来てるかの本。
著者は山田克哉(理論物理学者)。
講談社現代新書


核分裂

原発も原爆も「核分裂連鎖反応」という物理現象でなりたっている。(P.8)


核が壊れること(主に2つに分裂)を核分裂という。重い核ほど壊れやすい。(P.12)


水素などの軽い核同士が融合することを核融合という。水爆がある。(P.13)


原子炉とはウラン核分裂を一挙におこすことなく、ゆっくりと時間をかけて分裂させる装置。(P.14)


ウラン爆弾には相当に濃縮されウランが必要で濃縮装置を使はねばならないため費用がかさむ。
プルトニウム爆弾をには原子炉の使用済み核燃料からプルトニウムを摘出するため費用がかさむ。(P.14)


(原子または分子が)個体なら固く結ばれている、液体なら緩く結ばれている、気体(ガス)なら結ばれていない。(P.25)


原子の内部にはブラスの電気とマイナスの電気が「内蔵」されていて打ち消しあいゼロになっている。鉄のような金属は一番外側の電子が外れてしまっていて金属内を自由に動き回れる自由電子になっている。この自由電子が原子同士を電気力(+とーの反発力や引力)によって結び付ける(P.26)


またっく同じ原子で構成されている物体は元素と呼ばれている。(P.28)

核子

核子には陽子(+)と中性子(0)がある。(P.31)


陽子(+)の数と電子(ー)の数は同じ。陽子の重さは電子の1837倍。(P.32)


核子同士を結び付けるのは「核力(Nuclear force)」で陽子間の電気反発力を遥かに上回る引力。中性子は電気力が作用しないので核力のみ。(P.34)


中性子の数には関係なく、陽子の数のみが原子名を決定する。(P.38)


陽子の数が同じで中性子の数が違う(つまり質量数が異なる)2つの元素はアイソトープ同位体)と呼ばれる。(P.40)


陽子の数が多いと、陽子間の電気反発力を打ち消すために中性子の数が自ずと増えている。(P.48)


原子核を安定に保つための陽子の数と中性子の数との比率が「安定比」。(P.49)


核が中性子1個を吸収すると、形状が水滴のごとく変化する(核の振動)、ピーナッツ形になると、核はもともとプラスに帯電しているから電気反発力が働き2つに分裂する(核分裂)、分裂の際に中性子が飛び出す。(P.51)


分裂片の吹っ飛んでいく運動エネルギーが原子爆弾のエネルギーのほとんどを担う。(P.55)


中性子吸収→核分裂中性子放出(2個~3個)→中性子吸収→……これが核分裂連鎖反応。核分裂から中性子が放出されない限り原子爆弾原子力発電も生まれなかった。(P.56~P.57)


天然ウランの99.3%はウラン238(偶数ー偶数)で、0.7%がウラン235(偶数ー奇数)。(P.61)


ウラン235の含有率が大きいウランのことを濃縮ウランという。(P.62)


中性子は外に逃げたり、ぶつかっても吸収されなかったり、混ざっている別種の原子に吸収されたりもする。(P.63)


表面積最小、体積最大にするために球形。
核分裂連鎖反応が最後まで持続するのに必要な最小のウランの量を「臨界量」といい、それより小さいと臨界未満、それより大きいと超臨界という。(P.64)


ガン式ウラン爆弾の図(半球の臨界未満ウラン2個、イニシエイター2個→超臨界ウラン1個、中性子源イニシエイター1個)→エネルギー(熱1000万度+衝撃波)。(P.65~P.66)

電荷

電気力(引力、斥力、反発力)の元は「(+とーの)電荷」(「荷」は力の源)。(P.67)


究極的な意味で「電荷とは何か」は分かってない。(P.68)

電磁波

電磁波は電荷が加速されたり減速されたりすると、その周りの空間に発せられるもので一定速度だと発生しない。


「往復運動=振動現象」があると加速や減速もある。


「波」とは「振動」が伝わっていく現象。


1秒当たりの振動の回数を「振動数あるいは周波数」といい、その違いによって電磁波を分類。


低い(エネルギー小)←ラジオ電波、マイクロウェーブ、熱線(赤外線)、可視光線、紫外線、X線ガンマ線→高い(エネルギー大)


電磁波は光の速さで伝わる


電磁波の特徴①真空中も伝わる②物質の振動ではない(重さがない)


電磁波は電場と磁場が振動している。

アルファ線

アルファ線は粒子(アルファ粒子=ヘリウム核)の流れである。陽子2個と中性子2個が核力によって結ばれている。


ウラン238アルファ崩壊(アルファ粒子を放出)→トリウム234+アルファ粒子(ヘリウム核)


個々のウラン238がまったく異なった核(トリウム)に代わって数が半分まで減るまでの時間を「半減期」という。


アルファ粒子は電荷が大きく、電気的に強く反応するため紙切れ一枚でも遮蔽でき、空気中に放射された場合、肺に吸い込んでしまうと細胞と強く反応しガンを起こす確率が非常に高くなる。

ベータ線

中性子の数が大きすぎる核は、そのうち中性子の1個が陽子に代わり電子1個と反ニュートリノ1個が放出される。
中性子ベータ崩壊(化学反応ではなく素粒子反応):(中性子→陽子+電子+反ニュートリノ


ベータ崩壊が起きたときに電子(ベータ粒子)が放出される。この放出された電子(ベータ粒子)の流れをベータ線という。


ベータ粒子はアルファ粒子ほど物質原子と反応を起こさない。

ガンマ線

電磁波は物質でもなく電荷もないがエネルギーを持つ。ガンマ線は大きなエネルギーを持った電磁波。


ガンマ線を放出するプロセスをガンマ崩壊といい、エネルギーを持っていくので核はエネルギーが減少し安定する。


核がガンマ崩壊を起こしても構造は変わらないが「崩壊」と呼びならわされてきた。


ガンマ線は粒子として振る舞うときもある。


アルファ崩壊ベータ崩壊をした直後の核はまだエネルギーが高い場合が多く、「エネルギーの吐き出し」がガンマ線放出として現れる。


ガンマ線電荷を持ってないがエネルギーを持っているので物質を構成する原子の電子と反応する。つまり人体の細胞とも反応する。

中性子

中性子過剰の核は(ベータ崩壊以外に)中性子を直接放出したり、核分裂中性子を放出したりして多くの中性子が軍団をなして飛び回るときにそれを中性子線という。


中性子線はガンマ線と同じように電荷はないが、異なるのは重さがあることだ。つまり物質粒子の流れ。


陽子と中性子が相当に接近すると核力が働いくが、中性子のスピードが大きいと陽子を弾き飛ばす(反跳陽子)。


中性子のスピードが小さいと吸収されて中性子過剰になりベータ崩壊ガンマ崩壊となる場合がある。

放射能放射線

放射性物質には放射性元素(同じ原子からなる)放射性物質(いろいろな放射性元素が含まれる)がある。


放射線を出す能力を「放射能」。


どんな放射性元素も崩壊して別種の元素に変わるので「半減期」を持ち、これは人為的に変えることができない。(廃棄問題)。


放射線量(ベクレル、キュリー、レントゲン)、被曝量(シーベルト)。(経験から年間100ミリシーベルトまでは影響は出ないという結果あり)。

分裂片はベータ崩壊を繰り返す。半減期の短い分裂片のベータ崩壊から飛び出た電子は大きいエネルギーを持つ(スピードが速い)。さらに分裂片はガンマ崩壊もしガンマ線も放出される。核分裂連鎖反応はその最終世代で終わるが、そこで放出された中性子線はそのまま空気中にばらまかれる。


原子爆弾からはアルファ線は放出されないが、中性子線とガンマ線が放出され、また分裂片からはベータ線ガンマ線が放出される。

核爆弾は1億分の1秒という短時間の内に核分裂連鎖反応を終了させる。だからこそ一気に温度が上がり爆発現象を起こす。


ゆっくりとコントロールしながら分裂連鎖反応を起こす装置が「原子炉」である。

原子炉

中性子を減速させるために純水をしようする。中性子と陽子はほとんど同じ重さで、水(H2O)は水素(核=1個の陽子)を多く含んでいるため減速材に適している。


重水素(核が陽子1個+中性子1個)からなる水(H2O)を使用した重水炉もある、普通の水素からなる水を減速材として使用するのは軽水炉


核分裂連鎖反応を減速させるだけでなく、中性子の数がネズミ算的に増えることを防ぐために制御棒を挿入し、中性子を吸収させている。カドミウムのような中性子を吸収し、」しかも分裂を起こさない物質から構成されている。


中性子は原子炉の温度に匹敵するスピードにまで減速され、それ貴下のスピードにはならない。そのスピードまで落ちた中性子のことを熱中性子(サーマルニュートロン)という。


ある1つの世代に分裂を起こす中性子数が、すぐその前の世代の分裂を起こす中性子数と同じになった時、原子炉は「臨界」に達したという。


一番最初の核分裂を起こすために中性子を放出する中性子源をイニシエイターという。


光は水の中だと空気中より遅く走る。水中では電子が光よりも速く走る(チェレンコフ効果)。原子炉が臨界に近づくにつれてベータ粒子(電子)の数がおおくなるので電子から発する光の量も増え、水が青紫の光を発する。


日本の原子炉は軽水炉で、天然ウランを3%~5%濃縮したものを使っている。


95%以上のウラン238→熱中性子吸収→ウラン239→ベータ崩壊ネプツニウムベータ崩壊プルトニウム239(原子爆弾の材料にもなる)


ウラン235ウラン238も化学的性質は同じだが、重さが違うので、それを利用して選別する。


ウランをフッ素と化学反応させて6フッ化ウランすると低い温度でもガス状になる遠心分離を行える。回転する筒をいくつも用意し中心側の軽い6フッ化ウラン235を別の筒に吸い取って濃縮度を上げていく。


ガス拡散法では軽い分子(6フッ化ウラン235)と重い分子(6フッ化ウラン238)の「速度差」を利用して濃縮。


レーザー法では電子ビームを金属上のウランに当てて蒸気化し、そのウラン蒸気にレーザー光を当てることでウラン235だけをイオン化する。レーザー光が当たると電子が1個もぎ取られるため電気料がプラスとなる。プラスのウランはマイナスの電気に引き付けられるため、それを利用して取り出す。


遠心分離法によって「カス」として残ったウラン238を多く含む気体を化学処理で固体化したものが劣化ウランウラン238の比重は鉄の2.5倍もあり、砲弾の芯にもってこいの材料となる。この劣化ウラン弾が物体を貫通すると摩擦熱で微粒子となったウラン238が空気中に飛び散って混合され、空気中のウラン238アルファ崩壊し、アルファ線が放出され空気が汚染される。


「使用済み核燃料」はまだ使える燃料(ウラン235プルトニウム239)が残っている燃料棒の入った被覆冠。
放射性廃棄物」は使えるウラン235プルトニウム239を取り去った後のものをいう。


4兆個の核から1分間当たりに放射される放射粒子のことを、その元素の放射能という。


プルトニウム爆弾はガン式を使用できない。アイソトープであるプルトニウム240(陽子数94、中性子数146)を含んでおり、偶数-偶数ではあるが、外部から中性子を吸収しなくてもひとりでに「自発的核分裂」を起こす。


インプロ―ジョン式(爆縮式)は一様にそして急激に急をその内側に圧縮することで、密度が大きくなり核同士の隙間が狭まり、中性子がぶつかる確率が増し、また表面積が小さくなるので逃げていく中性子の数が減る。


爆縮式はガン式に比べ超臨界までにかかる時間が短い。


プルトニウム球の中心空洞にアルミニウム・フォイルで包んだポロニウムと、その周りを囲んだベリリウム粉からなるのがプルトニウム・コア。


中心に向かって爆縮するとアルミニウム・フォイルが破れアルファ線ベリリウム粉に吸収され中性子が発生し核分裂反応をイニシエイトさせる。


天然ウランの99.3%であるウラン238を使用したタンパー(中性子反射体)でプルトニウム・コアを囲み、その外側から一様に衝撃波を球中心に向かわせるために衝撃波レンズ(爆縮レンズ)を使用する。


プルトニウム239の臨界量はウランのそれより小さいが威力は大きい。しかし構造が複雑になるため全体の大きさは小さくならない。

核融合

あらゆる星のエネルギー源は水素による核融合反応。


温度上昇によりスピードが上がると水素は陽子と電子に分解されてバラバラなプラズマ状態になる。


温度が1000万度を超えるとスピードがさらに増し陽子同士が接近し、ある程度より狭まると核力が効き結合するが、そのうち片方の陽子が中性子に変わる(ベータ崩壊の逆)。このとき陽電子(反電子=プラスの電荷を持つ電子)とニュートリノが飛び出て安定状態になる。(陽子+陽子→重陽子D+陽電子ニュートリノ)水素の核融合反応。


p-p反応は弱い相互作用に関りがあるため起こりにくいが星の内部には膨大な数の水素(陽子)があるのでp-p反応が起こる。
重陽子D(p-n)+陽子→ヘリウム3(p-p-n)+ガンマ線(飛び出す)
ヘリウム3(p-p-n)+ヘリウム3→ヘリウム4(p-p-n-n)+陽子+陽子


以上p-p反応から始まってヘリウム4で終わる一連の核融合反応はp-pサイクルと呼ばれる。


結局、核融合を引き起こすためには高温高圧のプラズマガスが必要。


軽い核は陽子の数が少ないので電荷が小さい分電気的反発力も弱く、核同士が近づきやすいため核融合反応が起こりやすい。


水爆は原爆を起爆剤に使う。


水素H(p)、重水素D(p-n)、三重水素T(p-n-n)。


星の内部で起きている水素核によるp-p反応は地上では困難でも、重陽子Dと三重陽子Tにようる核融合反応は不可能ではない。


重陽子(p-n)+重陽子→三重陽子(p-n-n)+陽子
重陽子(p-n)+重陽子→ヘリウム3(p-p-n)+中性子
重陽子+三重陽子(p-n-n)→ヘリウム4(p-p-n-n)+中性子