経済学の本質とは?―――『日本人のための経済原論』を読んで①
経済学のエッセンスを理解するための本。
著者は小室直樹(経済学者)。
東洋経済。
Y=C+I
景気のよしあし
景気が良いか悪いかを決めるのは何か?
それはGNPの大小である。
GNPをYであらわす。そのYは何で決まるか?
消費+投資で決まる。これを知っているか知らないかだけでも大違いだそうだ。
そして、消費+投資を有効需要(effectve demand)という。
有効需要は、GNP(国民総生産)に等しい。これを有効需要の原理という。
えーと、つまり
ということで、これが大きいか小さいかで景気が良いか悪いかが決まると。
無限の波及という難問
上記から言えるのは
「消費が少ないから景気が悪い」のか「景気が悪いから消費が少ない」のかいずれかということになる。
このC(消費)がY(国民総生産)決め、YがCを決める」という関係を無限の波及という。
このような難問をどうするのか?
一般均衡論
その答えは一般均衡論だそうだ。難しそうな言葉が出てきた。実際、難しいらしい。
これを理解するためには、まず数学解析、位相数学などの数学的準備が必要ということだ。
しかし、なるべく数学など使わずに一般均衡論の要諦を解説してくれるという。ありがたい。
その戦術のための方法がスパイラルというものだ。
スパイラルは悪循環と訳されることが多いが良循環もある。
要は循環のことのようだ。
この論理は「ニワトリが先か?卵が先か?のパラドックス」と同じである。
つまり、循環論だ。
著者はこう言う。
当時のヨーロッパの経済学者は、循環論は説明ではないと教え込まれていたから、「賃金と物価のスパイラル」に困り抜いてしまった。
が、一般均衡論以後の経済学者にとっては、これほど簡単な模型はない。
相互連関図式を用いれば、いずれの模型も、簡明このうえない。
一般均衡論は、循環論の陥穽に陥ることなしに経済現象における相互関係を説明し得たので、曠古(未曾有)の大発明であると言われた。
(P.12)
正直のところ循環論と何が違うのか私はよく理解できなかった。「循環論の陥穽に陥ることなしに」と書いてあるので循環論とは違うのであろう。
間違っているかもしれないが、私の解釈を書いておくと。
循環論は作用の後も対象は変わらず同じ状態である。
→賃金A→物価A→賃金A→物価A→……
(例えばデフレスパイラルの場合だと、→低賃金→低物価→低賃金→低物価→……となり、ここではどのくらい賃金や物価に変化があったのか区別せず「低い」ということで同じと見做している)
スパイラルは作用の後に対象が変化し、その変化した対象がまた作用を及ぼしたものに変化を与える。
→賃金A→物価A→賃金B→物価B→賃金C→物価C→……
(例えばデフレスパイラルの場合、→低賃金100→低物価100→低賃金90→低物価90→のように、ここではどのくらい変化があったを区別している)
間違ってるかもしれないが、ひとまずこのように理解(誤解)しておく。
大不況の原因
著者は不況の原因をこう指摘する。
原因は、消費である。消費不足こそが大不況の根本的原因である。
(P.32)
まさしく、「CがYを決める」のであるが、そのC(消費)を決めるのは何か。
(略)つまり、それらによって所得が減ったから、より少なくしか消費しなくなったのである。
では、その「所得(Y)が減った」とはどういうことか。「不景気である」ということである。不景気で所得が減った。そのために消費が減った。こういうことなのである。
(P.34)
「①消費が少ないから景気がわるい」のか「②景気が悪いから消費が少ない」のか?
これら①と②は現在の経済理論のレベルからすれば、両方とも正しいと考えることができるという。
YがCを決め、同時にCがYを決める。CもYも、この相互作用のシステムによっていっぺんに決まる。
これを同時因果または相互因果というらしい。
需要と供給
経済財は「消費財=消費C」と「生産財=投資I」に直和分解されている。
「需要と供給が等しいこと」を均衡と呼ぶ。
需要関数とは購入予定表のことである。
この価格ならば、財をこの数量だけ購入するという購入計画表である。
供給関数とは販売予定表のことである。
この価格ならこの数量の財を販売するという販売計画表である。
完全競争
(1)需要者も供給者も十分に多数である。
(2)財は均一(同質)である。
(3)完全情報。
(4)参加と退出の自由。
マクロの相互関連
ミクロ経済学
単位(行動主体)は消費者・企業、中心変数はp(価格)
消費を決めるもの
所得、資産価格の変動、心理(これから先の景気予想)
限界消費性向
限界消費性向とは増えた所得と増えた消費の割合。
所得が1万円増えた時、消費が8千円増えたとすると、限界消費性向は0.8となる。
変数
相互に作用を及ぼしあっているYとCを、このシステムの内生変数という。
他方、投資IはYに作用を及ぼすが、Yから反作用をうけない。いわばシステム外にある。これを外生変数(与件)という。